どうしてコットンは安いのか(4)

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  • 投稿カテゴリー:コットン
  • 投稿の最終変更日:2021-11-01

17世紀ごろに綿製品がインドから輸入される以前のヨーロッパでは、羊毛が主な繊維製品でした。イギリスに綿製品が入ってくると、その綿の心地よさが大きな人気となります。そこで羊毛業者の反発があるのですが、結果としてはこの綿製品をイギリスで生産するという方向に向かい、そのことがイギリス工業化を大きく進歩させました。産業革命の始まりです。

 

やがて、インドで安く綿花を生産しそれを輸入、イギリス国内で製品を大量に作り他国に輸出する、という交易が興ります。インドにもイギリスの綿製品が半ば強制的に輸入させられます。この工業化と自由貿易の波によって、インドの綿布製作者も弱体化していきました。このあたりの歴史は、イギリスによるインド植民地の歴史、アメリカ奴隷制度の歴史とも重なり、綿花の価格も安く維持されていたのです。こうやって歴史をたどってみると、綿花生産はパキスタン、インドから歴史が始まり、イギリスの工業化の波によって歴史が変化したことがわかります。

 

この綿花生産者の貧困は、インドだけの問題ではありません。中国のウィグル自治区の強制労働問題もありますし、西アフリカの綿花生産者もその多くが貧困に苦しんでいます。大きな枠でとらえれば、先進国のように補助金を出す余裕のない国の生産者は、その生産物が珈琲であろうとカカオであろうとトウモロコシであろうと、取引価格は先進国の政策にゆだねられているということになるのかと思います。そして、この国際的な生産地と消費地の歴史はヨーロッパの工業化時代から始まっているようです。

 

安いアパレルは、消費者にとってありがたいものです。ただ、インドの植民地の歴史や綿花生産者の貧困のこと、アメリカの奴隷制度の歴史、西アフリカの生産者のこと、ウィグル自治区問題はすべて歴史を通して繋がっていて、今も未来もその歴史の途中であることは事実です。これから先、この問題に打開策は出てくるのでしょうか。2000年に入り綿花大量生産国であり輸出国であるブラジルは、アメリカの補助金が貿易の協定に反しているとWTOに申し立てをしました。WTOはそれを認め、アメリカに是正することを要求しています。

 

さて、ラオスのように綿花の工業化を断念した国は、少なくとも綿花生産による貧困のループには入っていないことになります。これから先、彼らの綿製品は廃れるのかもしれませんが、現時点においてはその良さを感じる人もいるのは確かです。